近年、異常気象や国際情勢の影響で、食料供給の不安定化が世界的な課題となっています。
そんな中で日本では、2024年4月から「食料供給困難事態対策法」が施行されることが決まり、SNSやニュースでも話題となっています。
本記事では、この法律の概要とその背景、そして「ヤバい」と言われる理由について深掘りしていきます。
食料供給困難事態対策法とは?
「食料供給困難事態対策法」は、2023年6月に成立した法律で、異常気象や国際的な食料不足などの有事に備えるための新たな仕組みです。
この法律では、以下のような内容が含まれています。
- 目的: 食料の大幅不足時に迅速かつ適切な対応を行い、国民生活や国民経済への影響を最小限に抑える。
- 措置内容:
- 米や小麦など主要食料の不足が予測される場合、生産拡大を要請。
- 必要に応じて、政府が農家や販売業者に生産計画の届け出や変更を指示。
- 指示に従わない場合、20万円以下の罰金や氏名公表の措置を実施。
背景には、1993年の冷夏や2022年のウクライナ侵攻により、小麦の価格が高騰した事例などがあり、こうしたリスクへの対応を強化する必要性が指摘されていました。
食料供給困難事態対策法がヤバいと言われる理由は?
この法律に対しては、農業関係者を中心に懸念の声が上がっています。その主な理由を以下にまとめました。
農家の現状に合わない制度設計
農業従事者からは「農業を知らない人が作った法律」という批判が多く聞かれます。例えば、
- 中山間地域では生産基盤が脆弱化しており、増産を求められても対応できる余力がない。
- 普段作らない作物を有事に作るよう求められても、高度な技術や設備が必要で実現が難しい。
ある農家の代表は「最悪の場合、米農家がさつまいもを作るよう指示される可能性もある」と述べ、現場の状況に即していない点を指摘しています。
罰則規定への反発
法律には、政府の指示に従わなかった場合の罰金や氏名公表の規定が含まれています。
この点について、立憲民主党や共産党などは「農家に負担を強いるものだ」として反対しました。
農業関係者からも「現場の苦労を無視して罰則を科すのは不公平」との声が上がっています。
輸送や地域特性への配慮不足
この法律は生産増加に焦点を当てていますが、物流や地域ごとの特性を十分に考慮していないとの指摘があります。
例えば、北海道で増産された食料が九州に届かないような状況では、法律の効果が限定的です。
近畿大学の研究者は「作るだけでなく、輸送網の整備や地域ごとの自給体制の確立が重要」と述べており、法律の実効性に疑問を呈しています。
食料供給困難事態対策法の課題と今後の展望
この法律が成立した背景には、国際情勢の不安定化や日本の自給率低下があります。
しかし、農業従事者の負担を軽減し、実効性を高めるためには、平時からの農業基盤強化が必要不可欠です。
また、法律が成立した現在でも、以下の点が未解決です。
- 生産拡大のための具体的な支援策が不足している。
- 輸送網や地域間の連携体制が未整備。
- 農家と政府の信頼関係の構築が不十分。
一方で、この法律を契機に食料安全保障への関心が高まり、平時の生産基盤強化が進むことが期待されています。
農林水産省も「強制的な指示ではなく、協力をお願いする形で進める」としています。
まとめ
「食料供給困難事態対策法」は、有事に備えた重要な法律である一方、現場の課題を十分に反映していない点で多くの懸念が残ります。
農業基盤の強化や物流の整備を進めるとともに、農家との信頼関係を構築しなければ、法律の実効性は担保されないでしょう。
今後、政府がどのようにこれらの課題に対応するか注視する必要があります。
この記事が、食料安全保障について考えるきっかけとなれば幸いです。
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